2024年8月、いくつかの農地法違反のニュースが大きく取り上げられました。
その一つが営農型太陽光発電に関するものです。
営農型太陽光発電とは、農地につき、一時転用許可を受け、農地に簡易な構造でかつ容易に撤去でいる支柱(高めのもの)を立てて、上部空間に太陽光発電設備を設置し、その下で営農を継続しながら発電を行う取組です。
このような、農業と発電を共に行う事業は、再生可能エネルギーの導入促進として、経済産業省からも交付金制度による推進が行われています。
ところが、この事業を行ういくつかの事業者が、農地の一時転用の条件「下部農地での営農のを適切に行うこと」を順守せず、一時転用期間満了後も設備を撤去しない、または交付金制度に係る条件であった認定後3年以内の農地転用許可を取得しないなどの違反状態に陥いる状態となってしまいました。
これにより、農地法による是正勧告、原状回復命令がなされたことはもちろん、交付金制度においても交付金の一時停止措置が取られています。
上記のような再生可能エネルギー事業は、現実問題として、その事業計画上、交付金・補助金制度の存在に大きく頼っているといわざるを得ません。したがって、制度のルール順守は絶対です。
「国から補助金(交付金)が支払われますから安心してください♪」という営業担当のセリフ、聞いたことはありませんか?これは、決してウソではありません。しかし、上記のような違反があれば、補助金・交付金は支払われない可能性があります。つまり、安心できません・・・
私たち専門家は、時として、法令遵守の意識が十分でない方とお話しすることもありますが、そのようなときにこそ、しっかりと制度を理解していただくためのやり取りをする使命があると考えています。
さて、上記の営農型太陽光発電の事例は、農地における農地法違反なので、交付金が一時停止措置につながることも想像がつきやすいと思います。およそ、交付金・補助金については「交付要綱(要項)」があり、そこでは次のような条文が用意されています。
第〇条 大臣は、第〇条第〇項第〇号の補助事業の全部若しくは一部の中止若しくは廃止の申請があった場合又は次の各号のいずれかに該当する場合には、第〇条第〇項の交付の決定の全部若しくは一部を取り消し、又は変更することができる。
(1) 補助事業者が法令、本要綱又は法令若しくは本要綱に基づく大臣の処分若しくは指示に違反した場合
(2)~(4) 【略】
法令等に違反した場合は、交付金・補助金の交付決定が取り消されうることが規定されています。この条文は、国だけでなく、都道府県・市町村のおよそすべての補助金交付要綱で同様の規定があります。
条文中の「法令」の範囲を限定するものもありますが、形式的には特に限定されていないものもあります。
もちろん、軽微な法令違反のみで、何千万円もの補助金が取り消されることは考えにくいと思われますが、個人の方が都道府県・市町村補助金を受けるような場合も、法令違反を理由に取り消される可能性があること、交付金・補助金制度があるから購入した設備等、補助金の取消し・返還があると資金繰りがどうなるか想像し、覚えておいていただければと思います。