医療水準や健康意識の向上により身体を基にした平均寿命が延びる一方、年齢を重ねることによる認知能力(事理弁識能力)が低下することは避けられないのが現状です。平均寿命が延びることに対し、心身ともに健康で日常生活が制限されない「健康寿命」は延びず、その差は約9年から12年もあるといわれ、健康寿命の期間を延ばすことは現代社会の喫緊の課題とされています。
この平均寿命と健康寿命の差を埋めるための方策の一つとして、「成年後見制度」があります。
あおき司法書士事務所(宇土市)では、ご本人あるいはご家族に、認知能力に不安がある方からの成年後見に関するご相談、手続のご依頼をお受けしています。
成年後見制度とは
認知症や精神障害などがある方は、ご自身でその財産を適正に管理することが難しく、周囲の心無い人による使い込み、悪質な業者による詐欺的被害などにあう可能性が高いと懸念されています。
そこで、認知症の症状などがある方(以下「本人」といいます。)を法的に保護し、支援する制度が成年後見制度です。成年後見制度では、後見人を選任し、本人に代わって適切な法的判断をさせること等により、判断能力が十分でない本人の日常生活・財産を守ることを目的とします。
法定後見と任意後見
成年後見制度は、大きく、法定後見と任意後見に分かれます。
法定後見
法定後見は、本人の判断能力が不十分となった後に、「家庭裁判所」によって選任された成年後見人等が本人を法的に支援する制度です。法定後見は、本人の自己決定権をできる限り活かすため、本人のその時の判断能力の程度に応じた「後見・保佐・補助」の3段階に分けられます。
家庭裁判所によるため、「申立て」の手続を行う必要があります。この申立ては、誰もができるわけでなく「本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長など」に限られています。
選任された成年後見人等は、それぞれの制度に応じて、一定の範囲で本人を代理したり、誤って本人がした契約を取り消すことなどができます。なお、必要に応じて、成年後見人等を監督する「後見監督人等」が選任されることもあります。
任意後見
任意後見は、本人が十分な判断能力を有する時に、あらかじめ、任意後見人となる人や、将来その方にお願いしたい(委任したい)次項を契約として定め、いざ本人が認知症等になった後、その契約を発動させることで、本人を支援する制度です。
法定後見と異なり、本人と任意後見人予定者との間で締結する「契約」によりますが、この契約は、公証人による「公正証書」で締結する必要があります。
また、法定後見監督人の選任が家庭裁判所の判断によることに対し、必ず任意後見監督人が選任されなければならないとされています。任意後見は、当事者がその内容を自由に決定できる「契約」を基礎とする反面、本人保護のため、後見業務の監督はより厳しくするといったところです。
法定後見の活用・注意点
ここからは、成年後見制度のうち、利用の多い法定後見について、その活用方法と注意点をご案内します。
法定後見の申立て
法定後見の申立ては、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。気になる費用は、次のとおりです。
- 申立手数料(収入印紙800円分)
- 連絡用の郵便料(裁判所指定額)
- 登記手数料(収入印紙2600円分)
- 医師への診断書作成報酬(医師へのお支払:およそ10万円以内)
このほか、手続に必要な申立書の作成などを司法書士に依頼する場合は、その報酬が必要となります。
法定後見の任意中止は不可
成年後見制度は、本人のための制度です。したがって、本人の判断能力が回復した場合を除き、制度利用を周囲の都合で任意に中止することはできません。
法定後見人等の役割
家庭裁判所に選任された成年後見人等は、本人の財産管理と身上保護をその役割とします。本人の不動産や預貯金などの財産を管理し、本人の状況を考慮して、必要な介護契約の締結や費用の支払などを行います。
一方、日用品の買い出しや病院受診のための付添、食事の世話、実際の介護、医療内容の決定などの事実行為は、行いません。成年後見人等は、介護ヘルパーさんなどにそれら必要な事実行為をお願いするための「契約を適切に締結すること」をその役割とします。
家族であっても法定後見人等になれるとは限られない
後見申立書には「成年後見人等候補者」を記入する欄があります。本人に家族がいる場合、家族を記入することももちろんできますが、この点、必ずしも記入された者が選任されるとは限られません。後見制度が本人の財産保護・支援であるため、それに適した者でないと家庭裁判所から後見人等に選任されることはありません。なお、申立書作成のご依頼を受けた司法書士が候補者となることもできます。
できることはあくまで財産の「保護」
後見人等の役割は、あくまで本人の財産の「保護」です。したがって、本人の財産を活用するような投資、投機はできません。例えば、本人の現預金を利用し、株式投資を行うといったことはできません。また、本人が所有するアパートなどを保護するための修理はできますが、資産を増やすための増築などはできません。さらに、子や孫への支援、小遣いも本人の財産保護とはいえませんので、後見人等は行うことができません。
例えば
”認知症を発症した父のため、息子が法定後見人になれるとは限らない。息子の事業のために父の預金を使うことはできない。孫への小遣いとして勝手に預金を引き出すこともできない。”
ということになります。
後見は登記されます
法定後見等により成年後見人等が選任されると、取引の安全の保護と本人のプライバシー保護との調和を図るため、後見人に関する情報などが登記されます。この点、任意後見も同様に登記されます。この登記は、本人のプライバシー保護のため、誰もが登記事項証明書の交付請求をできるものではなく、本人、配偶者、四親等内の親族、成年後見人など一定の者に限られています。本人の取引先が取引相手であることを理由に請求することはできませんので、取引の際に相手方から求められた場合は、上記の請求権者が取得することになります。
法定後見の申立てのご相談は、あおき司法書士事務所(宇土市)へ
あおき司法書士事務所(宇土市)では、ご本人、ご家族の状況をお伺いし、法定後見等の申立書の作成などをお手伝いしています。まずは、お気軽に、初回無料相談をご利用ください。
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