障害福祉サービス施設の指定は、法人でないと取れません。おすすめの法人は?熊本で設立

  • 障害福祉サービス事業所にお勤めの方が独立して事業所を立ち上げたい
  • あるいは今は全く違う業種だけど福祉サービスの事業所の指定を取りたい

 障害福祉サービスを行う事業所として指定を受けるためには、まずは法人であることが必要です。この法人の種類には、いくつかの種類がありますが、結論、指定を取るためにはどれでもよいため、法人設立時設立後のコスト(お金と手間と時間と人)、を比べて、よりスタートアップに適したものを選ぶことができます。

法人にはどういうものがある?

 私たちは、生まれながらにして、一人ひとりが当然に権利をもち、その一方で義務を負う主体となることができます。法令で「あえて」この権利と義務を制限することによって、その人を守ろうという制度もありますが、基本的には、一人ひとりが権利義務の主体となることできます。

 「法人」とは、法令の定める要件を備えることを条件として、人や財産の集まりなどに対して概念的にこの権利義務の主体となることを認められたものです。

 障害福祉サービス事業所の指定においては、適正サービスの安定・安全的な提供のためには個々人だけの能力等では足りないので、組織的に取り組みましょうというのが法の建前で、その判断のためまずは法人であることが求められているといえます。

 今回は、その法人として認められているものの代表例をご紹介しますので、障害福祉サービス事業所の指定をご検討されている方、あるいは法人の種類について少し知っておきたいという方にお付き合いいただければと思います。

(1) 株式会社

 まずは法人として、もっともメジャーなものは「株式会社」です。営利企業のイメージのイメージが強いかもしれませんが、近年では保育所や高齢者施設などを運営する株式会社が増えています。株式会社は、「株式」という割合的・単位的な形で出資を募り、出資と経営を分離させたものです。日本では中小企業の株式会社も多く、出資者=経営者という会社が大多数を占めているのが実情ですが、「株式会社を設立している」という肩書はイメージ的な部分が否定できませんがステータスと捉えられているといえます。

(2) 合同会社

 合同会社は、いわゆる持分会社として、金銭その他の財産を出資した者が「役員」として経営も行うというものです。株式会社が原則としては「何株もっているか」というふうに割合的・単位的な出資形態を取るのに対し、合同会社では「出資額○○○万円」というふうに会社の財産のうち具体的にいくら(何を)出したという形態をとります。

 合同会社は設立費用が安く、福祉分野に限らず多くの分野で近年設立されています。2019年においては新規設立会社の数について、4社に1社の割合で合同会社だったとのことです。

 ちなみに、日本では会社というと株式会社がイメージされがちですが、世界4大IT企業とされるGAFAのうち、Google・Amazon・Appleの日本における会社設立に関しては、当初株式会社であったものをわざわざ合同会社に変更しています。これは、合同会社の「所有(出資)と経営の一致」という最大のメリットを活かし、経営戦略の迅速な実施を図っているのが狙いとされています。

(3) 一般社団法人

 一般社団法人と聞くと少し「お堅い」イメージかもしれません。たしかに営利企業に比べると「公的」な分野への進出が多く、その理由として制度上「設立者に剰余金や残余財産の分配ができない」ことから「設立したのに儲けがこない」というイメージがあるのかもしれません。

 しかし、一般社団法人であっても株式会社などと同じく営利・収益事業ができ、役員への報酬支払(労働対価の支払い)をすることができます。設立についても、会社と同じく登記をすることによります。

(4) 特定非営利活動法人(NPO法人)

 NPO法人(特定非営利活動法人)は、ボランティアに関するものといった、社会貢献性の高い団体に関するものであるとのイメージが強いかと思われます。制度上もそのようなイメージどおりの取扱いがなされており、多くの優遇面がある一方、手続面もかなりの手間がかかります。

(5) その他法人(社会福祉法人・合名会社・合資会社など)

社会福祉法人

 社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として設立されるものです。障がい福祉サービスをはじめとする社会福祉事業を行う団体として最もイメージされるものかもしれません。団体の目的が社会福祉事業を行うことに限られますので、税制上をはじめ多くの優遇を受ける一方、その設立のためのハードルが非常に高く、運営においても所轄官庁の監査を定期的に受ける必要があるなど大変な部分があります。社会福祉事業・公益事業と併せて一定の収益事業を行うこともできますが、収益事業は社会福祉事業・公益事業の財源に充てるためであることといった要件があり、一次的な営利性がないものとなっています。

合名会社・合資会社

 合名会社・合資会社については、前述の合同会社と同じく、出資を持分として扱うものですが、合同会社と異なり、出資者のうち責任が無限である者がいるということです。合同会社は株式会社と同じく、出資した額以上の財産的責任を負うことはありません。一方、合名会社・合資会社の出資者のうち、無限責任社員といわれる出資者は、出資額以上の財産的責任を負うものとされています。

法人それぞれの特徴(メリット・デメリット)

 では、法人それぞれにどのようなメリット・デメリットがあるか、障害福祉サービス事業所の指定を受けることを前提として、表にまとめました。

法人それぞれのメリット・デメリット

法人メリットデメリット特に想定されるケース
株式会社法人形態として認知度が高い。
他者からの資金調達面で優れている。
合同会社に比べて、設立費用(法定費用等だけなら約25万円程度)が高い。
定期的な株主総会の開催、毎年の決算公告や定期的な役員重任登記など運営面の負担が少なくない。
既に営利事業を行っている会社が障がい福祉サービスを始める。
合同会社株式会社に比べて、設立費用(法定費用だけなら約7万円程度)が安く、役員重任登記や決算公告が不要であるなど運営面の負担も少ない。合同会社という名称の認知度が低い。
代表者の肩書が、代表取締役ではなく代表社員となる。
出資者が1人の場合は、相続承継を想定した定款が必要である。
第三者の出資を必要とする場合、原則当該者を役員とする必要がある。
一般社団法人設立費用(法定費用)が株式会社と合同会社の中間程度で済む。
公益的イメージがあり、社会的信用を得やすい。
営利型であっても株式会社よりも低い要件で低税率の適用も可能
株式会社と同様の負担がある。
利益分配ができず、出資の回収が難しい。
短期的に社会福祉法人への移行を検討している。
NPO法人税制上をはじめとした多くの優遇を受けることができる。設立のための要件が高い。
→役員が10人以上必要、設立までの6ヶ月程度はかかる。
年に1度、行政機関への報告義務、事業報告書などの情報開示が必要、NPO法人会計による必要など、運営面での負担が少なくない。
既にボランティア活動を行っている団体が、その延長で障がい福祉サービスを始める。

 なお、社会福祉法人については、既に保育所等の運営主体として法人実在がある場合が考えられ、障がい福祉サービスをスタートとする当該法人の設立があまり想定されません。また、合名会社・合資会社については、ご紹介したとおり責任が無限である出資者を必要とするため、障がい福祉サービスのスタート地点としてあえてこれらを選択するメリットは少ないと思われます。

合同会社のデメリットの解消

 合同会社の認知度自体については、すでにご紹介したとおり、新規設立会社の4社に1社が合同会社であるという実態から、やがて解決されるものと思われます。特に、比較的若年の起業家においては合同会社の認知度は既に十分あると思われます。

 会社法上「社員」=「出資者」という意味合いから、合同会社の代表者の肩書が「代表社員」となってしまう点については、例えば、名刺には「代表」とのみ記載すれば、利用者などに対して名刺を渡す場合も違和感なく通用すると思われます。障がい福祉サービス事業が利用者一人ひとりに寄り添うものであることからも、代表者の肩書を理由とした支障が生じることは想定されないのではないでしょうか。

 また、株式会社と違って毎年の決算公告が不要であることから、経営面の信用性が低いとの指摘もあります。しかし、障害福祉サービス事業所の指定を受けた場合は、原則3年または2年に1度、実地指導を受けなければならないこととなっています。この実地指導の結果が良好であることで事業所およびそのサービスが適正であることの証明となりえますので、経営面の信用性も十分に得ることが可能です。

 1人社員の場合は、相続承継を想定した定款が必要という点については注意が必要です。株式会社の出資者(株主)が死亡した(=相続が生じた)場合、株式は当然相続財産として扱われます。したがって、急な事態であっても相続人が第三者へ株式を譲渡することによって事業の継続が可能です。一方で、合同会社の出資者に相続が生じた場合は、定款に出資(=持分)を相続人が承継する旨の規定がない限り、相続人に持分が承継されることはありません。つまり、社員(=出資者)が1人の合同会社が定款に相続承継規定がない場合、その社員が亡くなると解散してしまうことになり、障害福祉サービス事業所の利用者などに迷惑をかけることとなります。出資者を複数人とする、家族にあらかじめ万が一の場合を相談し、相続承継の定款規定をおくなどの想定と準備が必要です。

 また、第三者の出資を得にくいと考えられますが、公的資金が給付金として支払われる障がい福祉サービスについては、利用者数さえ安定すれば中長期的な運営において追加融資を受ける必要性が生じることもそう多くはないと思われます。また、新たな事業所(サービス拠点)を追加したい場合も、第三者出資ではなく日本政策金融公庫といった政府系金融機関を第一とした金融機関からの借入という選択肢もあります。

まとめ

  • 障害福祉サービス事業所の指定を受けるための法人の種類は何でもよい。
  • 設立費用・運営面の負担を考えると合同会社がおすすめ
  • デメリット(会社種類の認知度・代表者の肩書)の解消は可能だが、出資者1人の場合は相続に注意

お問合せ

 障害福祉サービス事業所の指定をご検討の際は、こちらも御覧ください。障がい福祉サービス事業所指定申請

 ちなみに、綿密な計画も一人で作成するには限界があります。ヒアリングを受け、それをまとめたものを見ることによって、現状確認に役立ちますし、誰かと事業立上げについて話すだけでもはじめの一歩を踏み出したことになり、「きっかけ」とすることができます。まずはお気軽にご相談ください。

熊本県宇土市 あおき行政書士事務所

行政書士 青木 崇史